東京大学、古澤明教授の研究チームが、光の粒子に乗せた情報を他の場所に転送する「完全な量子テレポーテーション」に世界で初めて成功したと、8月15日(現地時間14日)に英国科学雑誌ネイチャーに論文が掲載されました。
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量子テレポーテーションは、1993年に理論提唱されたものの、もととなる「量子もつれ」という現象が完全に解明されていないこともあり、転送効率が悪く、情報転送技術として十分な制御が行えないため実用化の研究が積極的に行われていなかったものです。
しかし、1998年に、古澤教授(当時ニコン所属)が中心となったカリフォルニア工科大学の研究グループにより、完全な量子テレポーテーションを実現していました。

量子テレポーテーションとはどういったものなのでしょうか。

残念ながら、テレポーテーションと言っても、物質をワープするのではなく、情報を離れた場所に時間的誤差なく伝えるというものです。

物質は、原子(素粒子)といった粒子で表現されることが多いのですが、それは観測(接触などの方法)された際に確認される状態であり、実際には一定の範囲内のどこかに存在するという曖昧な状態「量子」で存在しているということが分かっています。
そのため、存在は確率で認識され、原子を粒子と認識している限り、物理法則が通用しないジレンマに悩まされることになっていました。
実際の挙動は、「波のよう」なと言われ、粒子として観測されるまで、どのように移動しているのか、はっきりしません。

量子テレポーテーションの話に戻りますが、非線形光学結晶(レーザーの波長を変更する結晶体)にUVレーザー照射を行うことで、「双子の光子」が得られるという実験があります。
これは、光子が2つに分離してしまう現象なのですが、それぞれの光子に何故か相互作用が働きます。
片方の光子に変化があると、もう片方の光子に瞬時に同じ影響があるという、これを「量子もつれ」というのですが、原因が分かっていません。

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この変化という情報の伝達速度が、光速を超えているとか、時間を超えているとか言われるほど早いため、この仕組を回路に組み込んだ量子コンピュータは、電気信号を直列処理する既存のコンピュータに比べ、光速+並列処理が可能となり信じがたい速度のレスポンスを返すことが可能になります。

古澤教授の論文では、これまでロスの多かった実験結果から、情報のテレポートを61%という高い成功率で達成したと発表しています。
現在4Gと呼ばれる携帯電話の通信規格LTEのような、通信中に発生するデータの欠損を補修するロジック(通信プロトコル)を組み合わせることで、コンピュータに組み込める現実的なレベルに近づいてきたように思えます。

ただ、小型化はまだまだ先の話なので、気長に期待して待ちたいと思います。

<量子の二重スリット実験>

※この動画の内容は、「観測」が何を行った結果であるかなど、あいまいな部分が多く、適切で無い内容が多く含まれますので、量子って不思議な存在なんだな程度に参考にして下さい。


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