パソコンの遠隔操作事件で、真犯人を名乗る人物が送ったメールのサーバーに無断で入ったとして、警視庁は朝日新聞社と共同通信社の記者、合わせて5人を不正アクセス禁止法違反の疑いで書類送検したと、NHKが報じています。
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書類送検されたのは、朝日新聞社の記者3人と共同通信社の記者2人の合わせて5人とのこと。
パソコン遠隔操作事件では、真犯人を名乗る人物から弁護士などに犯行声明のメールが送られましたが、警視庁によると、記者らは去年10月から11月にかけてこのメールのサーバーに無断で入ったとして、不正アクセス禁止法違反の疑いが持たれているそうです。
警視庁の調べによりますと、記者らがメールに書かれていた別のサーバーのパスワードを犯行声明のサーバーに入力したところ、パスワードが同じだったため送受信の記録などが閲覧できたということなんだそうです。

これについて朝日新聞社は、「メールの送信者が、誰に対してもアクセスすることを承諾していたのは明らかで不正アクセスには該当しない。正当な取材の一環で法律上も報道倫理上も問題ないと考えている」とコメントしているとのこと。
また、共同通信社は、「形の上では法律に抵触する可能性があるが、事件の真相に迫るための取材行為だった」とコメントしているとのことです。

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以下、朝日新聞DIGITALに掲載された朝日新聞社の見解。(引用)

朝日新聞記者の不正アクセス容疑について

 パソコン(PC)遠隔操作事件で、「真犯人」と名乗る人物が報道機関や弁護士へ送り付けた犯行声明メールのアカウント(以下:当該メールアカウント)への当社記者のアクセス(以下:当該アクセス)についての当社の見解は以下の通りです。

     ◇

 当社は、顧問弁護士とともに詳細に事実関係を調べ、検討した結果、当該アクセスについて「不正アクセス禁止違反の犯罪は成立しないことが明らか」と判断しています。

 以下、その理由をご説明します。

【1】「不正アクセス禁止法」違反罪の構成要件に該当しない

■「当該識別符号の利用権者」がアクセスを承諾していた

 「不正アクセス行為」の構成要件を定めた不正アクセス禁止法第2条4項は「当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く」と明記しています。

 当該メールアカウントを使用した犯行声明メールは昨年10月9日、報道機関や弁護士に送信されました。その中に当該メールアカウントの識別符号(パスワード、以下:当該識別符号)が記載されていました。

 この犯行声明メールは「【遠隔操作事件】私が真犯人です」と題し、「このメールを警察に持っていって照会してもらえば、私が本物の犯人であることの証明になるはずです」「ある程度のタイミングで誰かにこの告白を送って、捕まった人たちを助けるつもりでした」「これを明るみにしてくれそうな人なら誰でも良かった」などと記したうえで、同メールの送信者が関与したという遠隔操作ウイルスを使った事件の内容を記しています。

 以上のことから、当該メールアカウントの利用権者(「真犯人」を名乗る犯行声明メールの送信者)が、犯行声明メールの送付先の弁護士や報道機関を通じて同メールの内容が公表されることを望んでいたのは明白です。

 さらに、犯行声明メールの中で当該識別符号を公表し、それが使われて当該メールアカウントにアクセスされ、自分が真犯人であることが証明されることによって、遠隔操作事件で警察から犯人と誤認された人たちの容疑が晴れることを明確に求めていました。

 このように、利用権者は、当該識別符号を使って当該メールアカウントにアクセスすることを誰に対しても広く承諾していたことが明らかです。当社記者もそう認識しており、「不正アクセスの故意」は全くありませんでした。

 従って、当該アクセスは、不正アクセス行為には該当しません。

【2】報道機関として必要な取材であり、正当な業務行為

 刑法第35条は「法令または正当な業務による行為は、罰しない」と定めています。遠隔操作事件の捜査では、無実の人の誤認逮捕が相次ぎ、真犯人の特定が社会の重要な関心事となっていました。当該アクセスは、「真犯人」を名乗る人物が送信した犯行声明メールが実際に当該メールアカウントから送信されたものであるかどうか(第三者が犯人になりすまして送った形跡はないか)などを確認するために行った、正当な取材行為です。

 報道機関の記者が正当な取材として行った行為は、仮に犯罪の構成要件に該当するとしても、正当な業務行為として違法性を欠き、処罰されないことは判例でも明確に示されています(いわゆる『西山記者事件』での最高裁1978年5月31日決定をご参照下さい)。まして、当該アクセスは窃盗など不正な手段で当該識別符号を入手したものでも全くなく、正当な業務行為に該当することは明らかです。

 この当社の見解については、当社顧問弁護士名の「意見書」としてまとめ、警視庁刑事部にも提出しています。(朝日新聞社広報部)


***

なお、犯人とおもわれる人物からの犯行声明は、2012年10月、11月、2013年1月1日、5日の4回送られているそうです。

ところで、朝日新聞の見解では「さらに、犯行声明メールの中で当該識別符号を公表し、それが使われて当該メールアカウントにアクセスされ…」と犯行声明に“犯行声明を送ったメールサーバ”のパスワードが書かれていたように読み取れる記述がされていますが、NHKの報道では「メールに書かれていた別のサーバーのパスワードを犯行声明のサーバーに入力…」と、犯行声明には“犯行声明を送ったメールサーバではいサーバ”のパスワードが書かれていたように読み取れる記述がされています。
…どういうことなの?\(^o^)/


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